骨盤底筋群


骨盤底筋ってどんな筋肉?
最近、「骨盤ダイエット」や「骨盤底筋を鍛えてダイエット」など、骨盤・骨盤底に注目した記事を頻繁に見かけるようになりました。今回は、骨盤底に注目して女性にとってどのような影響を与えているのかお話していきたいと思います。

骨盤
骨盤(pelvis)と聞くと、腰回りの骨がパッと頭に浮かんできます。しかし、この言葉にはいろいろな意味が含まれていて、言葉の起源はとても古いそうです。日本語では「骨盤」と単に骨を表す言葉で表現されますが、英語の(pelvis)には

1.背骨を大腿骨(太ももの骨)につなぐ構造(骨盤の骨を指します)
2.骨盤腔(骨盤の骨にかこまれた空間)
3.腰のまわり全体

と使い方によって指している部分が違う言葉になります。


骨盤底ってなに?
骨盤を入れものと考えて、その底を骨盤底(pelvic floor)と呼びます。バケツを想像してみてください。バケツの底が抜けてしまったら中身がこぼれて大変なことになりますよね。骨盤底は骨盤にハンモックのようにぶら下がり蓋をしている複数の筋肉や靭帯・結合組織の事で、バケツでいうバケツの底にあたります。その為、一般的に骨盤底筋を鍛えましょう!と言われますが、医学的に骨盤底筋という一つの名前を持つ筋肉は存在していません。骨盤底の複数の筋肉を指して骨盤底筋群と呼ばれることが多いです。


骨盤底の役割は?
人間の骨盤底はとても強固にできています。その理由は、人間が二足歩行の動物だからです。二足歩行への進化とともに、骨盤底もより強固なものに進化をしていきました。四足の動物、たとえば犬の骨盤底は横向きの通路になっており、まばらな筋肉のみで人間のように蓋は存在しません。お腹の中の臓器をハンモックのように支え、立っていても内臓が下に下がってこないようにし、体の動作によって生じる強い圧力(主に腹圧)を受け止め支えているのが骨盤底です。もし骨盤底がなかったら、人間は歩行や腹筋運動をするだけで内臓が膣や肛門から出てきてしまう!!なんて状態になってしまいます。


女性の骨盤底の弱点とは?
とても強固な骨盤底ですが、不思議な事があります。なぜ、強固な蓋があるのに私たちは排泄物を体の外に出したり、子どもを産むことができるのでしょう?

答えは簡単で、直腸・尿道・膣は骨盤底を貫いているんです。

しかも、ただ貫いているだけだと中身はもれてしまいます。しっかりと括約筋という自分の意思でコントロールできる筋肉や骨盤底の筋肉・繊維組織で締め付けて中身がもれるのを防いでいます。男性も基本的には同じ構造なのですが、女性には出産という重要は役割があります。矛盾するのですが、女性にとっては構造上骨盤底が強固すぎないほうが出産には有利なのです。そのため、男性と比べて女性の骨盤底は華奢に作られていると言われています。当たり前ですが、男性には膣もありません。華奢な構造の骨盤底なのに、骨盤底にかかる負担は男性の比にならないのです。妊娠・出産後も女性の生活は長く続いていきますが、女性の体は妊娠・出産を最優先に作られているといえます。そのため、妊娠・出産の回数が多くなればなるほど。また年齢を重ねれば重ねるほど、女性は骨盤底の強度を失うことで起こるトラブルを抱えやすくなります。

※分娩には骨盤底を鍛えたほうがいいという考え方もあります。ここでは、男性と比べてという意味で骨盤底が強固すぎないほうが良いとします。


分娩による骨盤底への影響は?
子宮・膀胱・直腸は、骨盤底に釣りあげられ、さらに下からハンモックのように支えられることで骨盤内に固定されています。骨盤底は、妊娠中は大きくなる子宮と胎児をしっかりと支える役割を担い、分娩時には十分にやわらかく開き胎児を通す必要があります。そして、児が誕生した瞬間から、子宮・膀胱・直腸をしっかり支えなくてはならないのです。分娩に至る時点で、胎児の頭囲は30前後になります。これだけ大きなものが、極限まで骨盤底を引き伸ばしながら進んでくるのです。人間の体はとてもうまくできていて、分娩時にはこのような極限の状況に適応できるようになっています。しかし、十分に産道がやわらかくならないで分娩に至った場合や、長時間の分娩経過によって骨盤底の支持組織が損傷を受けた場合、出産により子宮が膣から下垂してきたり、尿漏れ・便失禁が生じてしまうといった状況が生じることは少なくありません。

分娩後には、しっかりと骨盤底をケアしておく必要があります。ここでケアを怠ると、20年30年後のトラブルにつながる可能性が高くなってしまうのです。もし、出産後に少しでも尿漏れや便失禁の症状が出たという方がいたら、なおさら気をつけてケアを続けていきましょう。


現代女性における骨盤底ケアの重要性
みなさんは、和式トイレを使用できますか? 掃除をする際に雑巾がけをしていますか?現代社会はとても便利になっていますよね。意識しないとすぐに運動不足になってしまいます。昔は、ただ生活するだけで骨盤底が鍛えられていました。上の二つの質問。じつはこの二つ、骨盤底の筋肉を使う動作なのです。このような女性の運動不足は、医療介入なしに分娩ができる女性を減らし、さらに産後の骨盤底トラブルを増加させていると考えられます。分娩を経験した方はもちろんのこと、経験していない場合であっても意識してケアをしなければ骨盤底は残念ながら加齢とともに着実に緩んでしまいます。骨盤底が緩むと起こる症状は、子宮脱(膣の中に子宮が下りてきてしまう状態)尿失禁など生活の質に直結するものです。今の生活はもちろんのこと、20年30年後の自分のために、しっかりと骨盤底を整えていきましょう。


分娩直後の方
分娩直後は、骨盤底のハンモックのように内臓を支える機能が弱っている状態です。ここで無理に立った状態で腹圧をかけたり、雑巾がけをしたりするのは逆効果です。だいたいは、お産した施設のパンフレットに産褥体操が記載されていると思います。そのパンフレットの内容に沿って無理のない範囲でケアを始めてください。また、不安のある方はその都度施設の助産師の指導を受けましょう。

骨盤ベルトを持っている方は、できるだけお産直後、歩行を始める前からベルトでしっかりと骨盤の出口・骨盤底付近を締めておくことも大切です。しかし、ベルトはあくまでも足りない筋力の補助です。筋力自体の回復も行う必要があります。以前、ウエストニッパーが流行しましたが、骨盤の出口ではなく上のほうをきつく締め付けると逆に内臓を下に押し下げてしまいます。ウエストニッパーは産後にはお勧めできません。

寝たままで肛門を締めたり緩めたりする運動が一番この時期の運動としては適しています。また、ヨガの橋のポーズは、肛門をぐっとしめ骨盤底を締める動作で、さらにヒップアップをするので内臓が下に下がらず上にあがってくれます。産後にも適している動作といえます。

最低でも、産後1カ月は無理な腹圧は避けて上記のようなトレーニングで骨盤底を回復させましょう。病院の1カ月健診を目安に、少しずつ普段の生活に戻していくことが大切です。


非妊娠時の方
基本的には、してはいけない動作はありません。普段の生活で、モップでの掃除を雑巾に変えてみたり、家事をしながら肛門の引き締め運動をするなど特別な事ではない動作を日常にしていくことも大切だと思います。また、ヨガの橋のポーズは全ての女性に効果的な動作です。骨盤の歪みを改善しながら、適度な筋力をつけて骨盤を正しい位置に固定することも大切ですね。


まとめ
女性にとって骨盤底をケアするという事は、ダイエットだけでなく生活そのものの質を保つために大切なケアといえます。「尿漏れなんて私はならないから大丈夫」ではなく、常に女性はリスクを抱えていることを頭においていただき、ケアする意識を持っていただけたらと思います。